さて、最近では超高齢化社会といわれるように老人の割合が増えてきました。これは社会構造的にはよくありませんが、かといって身内に早く亡くなって欲しい、と思う人も少ないでしょう。そこで今回は安寧長寿の縁起物を紹介していきたいと思います。
鶴と亀
もともとは、古代中国で鶴と亀を長寿の象徴としていたものが日本に伝わったといわれています。鶴は夫婦仲が良く、一生連れ添います。このことから「夫婦鶴(めおとづる)」と呼ばれ、夫婦仲の象徴でもあります。
また、鳴き声が遠方まで届くことから「天に届く=天上界に通ずる鳥」ともいわれています。
これらに加え、鳥類の中では鶴は長生きすることから長寿の象徴となり、民衆に「めでたい鳥」と思われていたそうです。
長寿の願いを込めて折り紙で鶴を折り、千羽鶴にする習慣は室町時代(1336年~1573年)に始まり、江戸時代(1603年~1868年)には病気回復や必勝祈願など、現在のようにさまざまな願い事をするために千羽鶴を作るようになったといわれています。
亀は古代中国では仙人が住む蓬莱山(ほうらいさん)の使いとされ、知恵と長寿を象徴する動物とされていました。この象徴がそのまま日本にも伝わり、鶴とともに長寿を象徴する吉祥の動物とされ、縁起が良い生き物といわれています。
鶴は千年、亀は万年と言いますし、浦島太郎のお話にも登場します。
しかし、なぜ鶴と亀が安寧長寿の縁起物なのかをご存じない方は多いのではないのではないでしょうか。
中国より縁起が渡ってきたというのも多くのものがそのように渡ってきたように「鶴と亀」の縁起も例外ではないようです。
鶴と亀の縁起の由来を知ることで縁起物のありがたみをより感じるようになるのではないでしょうか。
干しアワビ
奈良・平安時代には、貴族の間で珍重された食材だったようです。
鮑は美味しくて乾燥して保存できることから、高級な贈答品でした。特に鮑の身を薄く長くそいで伸ばして乾燥させた熨斗鮑(のしあわび)は初めは食べていましたが、後に吉事の印として贈り物につけるようになりました。今もその風習はのし紙やのし袋として受け継がれていて、左の図の○の部分を熨斗鮑といいます。
長くのびることから、永続して発展する意味でめでたいとされています。
しかし、長く伸びることが長寿の縁起物としてされた理由というのは面白いのではないでしょうか。
千代呂木
シソ科の多年草木の巻き貝に似た根を、梅酢やシソ酢に漬けて赤く染めたもです。
おめでたい文字をあてて、「長老木」「長老喜」「千代呂木」と書き長寿を祈ったものです。ちょろぎは黒豆と共に盛り付けられます。
こちらも案外と多い当て字の縁起物です。
長寿をあらわす当て字をあてることで縁起を担いだわけです。
日本人はこういった縁起の担ぎ方をよくするため、一見して縁起物とはわかりませんが、日本人として見るとなるほど、とひざを打つような縁起物が多くあります。
海老
海老はおせち料理にも入っているように、縁起のいい食べ物とされています。海老は海の老と書くように、長寿のシンボルとされています。これは海老の曲がった姿が、老人の腰の曲がった姿になぞらえています。腰が曲がるまで、長生きして欲しいという意味です。
松
そんな馴染み深い松が、なぜ縁起物になったのか? その一番の理由としては松が常緑樹であるために冬でも緑を絶やさないことが挙げられます。常に青々としているその姿から不老長寿の象徴と考えられたわけです。同じように常に青さをたたえている竹や、冬に花咲く梅も縁起がいいとされていて、松竹梅が構成されたようです。ただし、今のように松竹梅のうち松が一番上というのは近年になってから料理屋で特上・上・並のかわりに松竹梅を導入したために起きた現象であって、もともとは松竹梅に上下の関係は無かったようです。
この順番については諸説があって、もともと松竹梅は中国の冬の画題であって木の勢いの強さの順番で松竹梅になった説や、松は仙人が食べるので一番上などという説もあります。
同じように松という言葉の語源も諸説あり、久しく齢(よわい)を保つことから「たもつ」が転じて「まつ」になったという説や、葉がまつげに似ているから「まつ」である、神が木に宿るのを「待つ」などがあります。
諸説あるようですが、門松を見ても分かるとおり、日本人にとって松というのは特別な木であるようです。