昆布や梅などの縁起物にお湯や緑茶、ほうじ茶などを入れてのむ「福茶」というお茶があるのですが、皆さんはご存知ですか?実はこの「福茶」には深い歴史と「なるほど!」と思わせてくれるような先人の知恵があったのです。そんな「福茶」についてのいろいろをまとめました。
縁起物の「福茶」には二つの由来があった?
お正月の「福茶」
京都を中心にして広く関西地方の方や、特に煎茶道を嗜まれる方たちにとって、お正月の「大福茶」は欠くことのできないものだと思います。大福茶の由来は村上天皇の治世にさかのぼります。その頃、京に疫病が蔓延し六波羅蜜寺の空也上人が大振りの茶碗に梅干を入れた茶を振る舞ったところ疫病が下火に向かったとされ、その後村上天皇が正月元旦に同じ茶を服して人々の無病息災を祈ったことに由来します。王が服す茶で「王服茶」、これが「大福茶」になりました。現在ではお茶の中に梅干、結び昆布、塩を入れて飲むことが多く、正月が近づくと大福茶のセットがお茶屋さんの店頭を飾っています。
節分の「福茶」
節分には、炒った豆を「年神様」にお供えし、節分の晩に家長あるいは家の年男が“鬼は外、福は内”と言いながら豆をまきます。まいた豆には穀霊が宿るとされ、邪気を払う力があると考えられています。
その豆を、邪気を払い福を呼び込むように、と願いながら年の数だけ食べます。
福茶はこの豆に昆布・梅干しなどを加えたお茶で、節分以外にも大晦日やお正月に縁起を祝って昔から飲まれてきたものです。
お正月の「福茶」と節分の豆まきの豆を使って入れた「福茶」とに分かれていったようです。
これらの言い伝え以外にも、
空也上人が疫病平癒を祈り彫った「十一面観音」に「福茶」をお供えしていて、
この観音様のお供えものだった「福茶」を病人に飲ませたところ、多くの人が病気から回復した、という言い伝えもあるようです。
「福茶」ってどんな「お茶」?
黒豆、昆布、梅干し、山椒といった具に煎茶や湯を注ぐ
「福茶」の材料の由来
福豆まめに暮らす・まめに働く
節分の時には歳の数だけ福豆を食べると縁起が良いとされています。30歳では30個となかなかの数になり、食べきるのも大変な時もあります。そんな時に歳の数の福豆を入れてお茶を出して飲むと良いとされています。昆布
よろこぶ
喜ぶという語呂合わせで、昆布は縁起物やお祝いの品に多用されます。
結び昆布だけでなく、塩昆布や昆布の佃煮などを使うこともできます。梅干し
めでたい・毒消し
めでたいとされる松竹梅の中の1つです。また、殺菌作用があるため、昔からお弁当の中に入れたり、おにぎりの中に入れて使ってきました。
地方で違う「福茶」
長野県佐久地域
豆殻または菊の枝などを焚いて若水を沸かす。茶請けとして勝栗、柿、豆(あおばつ)、数の子などを添える。
山口県の徳地町では「三朝の福茶」といって、正月三が日は茶に梅干しと砂糖を入れて飲むとされ、長崎県吉井町でも若水でたてた茶を飲み、大根・梅干し・吊るし柿・昆布などを食べるそうです。
ところがおもしろいことに、同じような福茶を節分に飲むところも各地にあるのです。静岡県袋井市では、節分の豆まき用の豆を三粒ほど茶釜に入れ、家族団欒の中で杓でこの豆をすくいあげた人が幸運に恵まれるといっています。
ちょっと変わった「福茶」
黒煮豆(市販の煮豆を使用)数粒
梅干し 1個
くるみ 1個
鰹削り節 ひとつまみ
※削り節も具の1つとして頂きます
※削り節が気になる場合は、別の容器に削り節を入れて熱湯を注いで5分ほど蒸らして、茶こしでこしながら上記の材料を入れた器に注ぐといいです。
子供向け基本の福茶を作って、次の具材を入れます
カマボコ(小さく切って使う)
カニカマ(縦に4回くらい割いてから半分に切る)
ぶぶあられ(少し多めに入れると子供は大喜び。単品で売っています)
手まり麩(お吸い物に浮かべる小さな手まりのようなお麩。単品で売っています)
ミニトマト(ヘタを取って半分に切って使う)
※子供向けの場合、梅干しを入れないで代わりに梅昆布茶を使うと飲みやすくなります
大人向け大葉(細切り)
ミョウガ(細切り)
生姜(すりおろしをひとつまみ加えます)
七味(ほんの少し入れると味が引き締まります)
わさび(ほんの少し溶き入れます)
最後に…
昨今では「福茶」という飲み物をご存知ない方も多いのではないでしょうか?
お茶の効能にプラスして縁起物を加えることで
厄払いや延命長寿といった縁起を担ぐと言うところから追いかけていった飲み物だと感じました。
また、この「福茶」を生みだしたとされている「空也上人」がいなければ、
「福茶」が誕生することも、世に広がることもなかったかもしれませんね。
これからも引き継がれていって欲しい縁起の良いものです。